メンタルは強くなる?臨床心理士が教える“折れにくい心”の育て方

「心が弱い」と感じるとき、私たちは自分を責めがちです。でも心理学的には、心の強さは生まれつきではなく育てられる力です。本記事では、臨床心理士の視点から、折れにくい心と回復力(レジリエンス)を育てる方法を解説します。
Contents
はじめに:「メンタルを強くしたい」という言葉の裏にある誤解
「もっとメンタルを強くしたい」「落ち込まない自分になりたい」——そう感じるとき、多くの人は“心の強さ=感情を抑えること”と誤解しています。
しかし臨床心理学の立場から見ると、「強さ」とは折れないことではなく、“折れても回復できる力”を意味します。
人の心は常に変化しています。
ストレスや不安は誰にでも訪れますが、重要なのは「どう立ち直るか」。
心理学ではこの力をレジリエンス(resilience:心の回復力)と呼びます。
「メンタルが強い」とはどういうことか?心理学的に見る3つの要素
レジリエンス(resilience:回復力)
ストレスや困難を経験しても、それを糧にして再び立ち上がる力。
Masten(2001)はこれを「ordinary magic(特別ではない魔法)」と表現し、誰にでも育つ可能性がある力だとしています。
自己効力感(self-efficacy)
A.バンデューラによる概念で、「自分には対処できる」という感覚。
客観的な能力ではなく、“できると思える自己信頼”が行動の起点になります。
小さな成功体験の積み重ねが、この感覚を育てます。
心理的柔軟性(psychological flexibility)
感情や思考を否定せず、ありのままに受け止めながら行動を選ぶ力。
これは近年のACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で中核となる概念です。
心が「折れにくくなる」3つの心理的メカニズム
① 感情を「敵」としない
不安や悲しみは“弱さの証”ではなく、“何か大切なものを守ろうとする反応”。
感情を排除しようとするほどストレスは増します。
心理学研究では、感情を受け入れ、表現できることがレジリエンスを支えるとされています(Bonanno, 2004)。
② 「認知の柔軟性」が回復を支える
同じ出来事でも、意味づけの仕方によって感情反応は異なります。
「失敗した=終わり」ではなく、「失敗は学びの機会」と再解釈できる人ほど、ストレスの影響が少ない傾向があります。
この「思考のしなやかさ」を育てる方法が、認知行動療法(CBT)です。
③ 社会的つながりが「心の免疫」になる
社会的サポート(social support)は、レジリエンスを予測する最も強い要因のひとつです。
孤立せず、信頼できる他者に助けを求められる力も“折れにくい心”の一部です。
心の回復力を育てる心理学的アプローチ
(1)認知行動療法(CBT):思考のパターンを再構築する
CBT(Cognitive Behavioral Therapy)はアーロン・ベック(A. Beck, 1976)が体系化した心理療法で、
人が出来事そのものではなく「出来事の解釈」に反応するという前提に立っています。
臨床では、自動的に浮かぶ否定的思考(例:「失敗=無価値」)に気づき、より現実的で柔軟な考え方へ再構成していきます。
このプロセスを繰り返すことで、ストレスに対する反応の幅が広がり、感情の波に飲み込まれにくくなります。
研究では、CBTが前頭前野の活動を高め、扁桃体の過剰反応を抑制することが示されています。
思考のトレーニングが脳の反応パターンを変えるのです。
(2)マインドフルネス:注意を“今ここ”に戻す
マインドフルネス(Mindfulness)は、ジョン・カバット=ジンが医療現場に導入したMBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)に始まりました。
評価せず、「今この瞬間」に意識を戻すことで、自動的な思考連鎖から距離を取る練習です。
心理学的にいえば、マインドフルネスは注意制御・情動調整・メタ認知を高める介入です。
脳科学研究(Hölzel et al., 2011)では、マインドフルネス実践者の扁桃体の容積が減少し、前帯状皮質の活動が増加することが報告されています。
つまり、「気づく力」が心の回復を神経レベルで支えるのです。
日常での実践例:
- 呼吸を感じながら1分間だけ意識を向ける
- 食事の香りや味に注意を向ける
- 「今、自分は何を感じているか」を静かに観察する
これらを続けることで、ストレス刺激に対して“立ち止まる余白”が生まれます。
(3)ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー):感情と共に生きる技法
ACTはスティーブン・ヘイズ(S.C. Hayes, 1999)が提唱した「第3世代の行動療法」。
CBTが「考えを変える」ことを目指すのに対し、ACTは「考えや感情を変えようとしない」という点で異なります。
むしろ、「不快な感情があっても、自分の価値に沿って行動する」ことを重視します。
ACTの理論基盤は関係フレーム理論(Relational Frame Theory)で、言語や思考が行動に与える影響を説明します。
その中心にあるのが心理的柔軟性(psychological flexibility)。
6つのコアプロセス:
- 受容(acceptance)
- 脱フュージョン(defusion)
- 現在志向(present moment)
- 自己としての文脈(self-as-context)
- 価値の明確化(values)
- コミットされた行動(committed action)
このアプローチにより、「不安だからやめる」ではなく「不安があっても進む」ことを学びます。
ACTは、うつ病・不安症・燃え尽き症候群・慢性疼痛など、幅広い臨床領域で有効性が報告されています。
日常でできる“折れにくい心”のセルフケア
- 感情ジャーナリング: 感情を紙に書き出すだけで、脳の情動反応が鎮まる(Pennebaker, 1997)。
- 小さな成功体験を積む: 行動の積み重ねが「自分はできる」という自己効力感を強化。
- 身体を整える: 軽い運動や深呼吸は自律神経の回復を促し、心理的レジリエンスを高める。
- 人とつながる: 「頼れる関係性」が最も強力な心理的保護因子。
参考・外部リソース
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まとめ:強さとは、感情を抑えることではなく“しなやかに戻る力”
“メンタルが強い人”とは、決して落ち込まない人ではありません。
むしろ、落ち込んでも戻ってこられる人です。
心の強さ=感情を受け止めながら、自分の価値に沿って行動する力。
臨床心理士としてお伝えしたいのは、
「メンタルは強くなる」というよりも、「心の回復力は育てられる」ということ。
その力は、誰の中にもすでに存在しています。
心理学的アプローチを通して、それを“思い出す”ことから始めてみてください。
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