妊活・不妊治療という繊細なプロセスの中で、「どうしてわかってくれないの？」「ひとりで頑張っている気がする」と感じたことはありませんか？

夫婦で妊活・不妊治療に向き合っているはずなのに、気持ちが伝わらず、心がすれ違ってしまう――それは、珍しいことではありません。

この記事では、臨床心理士の視点から、妊活ストレスが夫婦関係に与える影響と、すれ違いを防ぐ“対話の工夫”についてお伝えします。

妊活・不妊治療がもたらすストレスと夫婦の距離感

妊活・不妊治療は、身体的・精神的な負担が重なりやすい時期です。

• 通院のプレッシャー
• 結果が出ない焦り
• 周囲との比較
• いつまで続くかわからない不安

こうしたストレスは、心の余裕を少しずつ削っていきます。

本来はパートナーと支え合いたいのに、気持ちに余裕がないと、「伝えたいことがうまく言えない」「相手の言葉に過敏に反応してしまう」といったすれ違いの連鎖が生まれやすくなります。

すれ違いの背景にある“こころの動き”

妊活中のパートナー関係においてよく見られるのが、以下のようなパターンです。

• 相手の言葉が「冷たく」感じてしまう
• 沈黙を「無関心」と受け取ってしまう
• 小さな一言に過敏に反応してしまう

こうした反応の背景には、「ちゃんと向き合ってほしい」「理解してほしい」という本音の欲求があります。

ストレスが強いと、脳の中で感情をつかさどる扁桃体が敏感になり、ちょっとした言葉にも強く反応してしまう傾向があります。これは心理学で「感情過敏」と呼ばれる状態です。

つまり、すれ違いは「関係が悪いから」ではなく、心ががんばりすぎているサインともいえるのです。

心理士がすすめる｜すれ違いを防ぐ3つの対話法

① 「私はこう感じた」と、自分の感情を主語にして話す

つい「なんで○○してくれないの？」「あなたはいつも…」と言いたくなる場面でも、伝え方を少し変えるだけで、相手に届きやすくなります。

例：
✕「なんで黙ってるの？」
〇「私はちょっと不安になって、話がしたかったの」

自分の感情にフォーカスすることで、攻撃ではなく“共有”として受け取られやすくなります。

② 正解を求めず、感情に「ただ気づいてもらう」ことを目指す

対話の目的は「解決」ではなく、「気持ちに気づいてもらうこと」でも十分です。

相手にとって何かを変えるのが難しい状況でも、「そう感じてたんだね」と認めてもらえるだけで、心の緊張がやわらぎます。

大切なのは「共感」や「関心」の表現。それだけで関係性の温度は変わります。

③ 話す“タイミング”を見極める

感情が高ぶっているとき、相手が疲れているときなどに気持ちをぶつけても、うまく伝わらないことがあります。

「今話してもいい？」と前置きしたり、「後で少しだけ話せる？」と聞くことで、対話の土台が整いやすくなります。

「伝え方」だけでなく、「伝えるタイミング」も対話の大事な要素です。

どうしてもうまく話せないときの選択肢

「何度伝えてもわかってもらえない」
「話そうとするとケンカになってしまう」

そんなときは、無理にふたりで解決しようとせず、第三者のサポートを取り入れることもひとつの方法です。

• カップルカウンセリング
• ひとりで受ける心理相談
• 書いて気持ちを整理する「感情ジャーナル」

対話が難しいときこそ、「対立」ではなく「整える」アプローチが有効です。

まとめ｜すれ違いは“悪いこと”ではない

妊活は、心と体のエネルギーを多く使う時期です。

だからこそ、関係にゆらぎが出るのは自然なこと。

すれ違いの奥にあるのは、「つながりたい」「わかり合いたい」という気持ち。

それに気づき、対話の方法を少し工夫することで、ふたりの関係はやわらかく整っていきます。

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