不妊治療中の流産による心理的ストレスへの対処法|孤独な悲しみに寄り添う心のケア
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はじめに
不妊治療は心身に多大な負担を伴う医療的介入です。その過程で「妊娠」が成立した後、残念ながら流産という結果に至ることは珍しくありません。特に、長期にわたり不妊治療に取り組んできた方にとって、流産は希望から絶望への急激な転落であり、深い喪失体験を伴います。この記事では、臨床心理学の観点から、流産によって引き起こされる心理的ストレスへの理解と、心のケアの具体的な方法について解説します。
1. 不妊治療・妊活中の流産がもたらす心理的影響
■ 喪失体験としての流産
流産は、明確な「死別」ではないものの、心理的には非常に強い喪失体験です。特に、胎児への思い入れや未来への期待が大きい場合、「我が子を失った」という認識が強くなり、悲嘆反応(grief reaction)が生じます。
■ 複雑化しやすい悲嘆
不妊治療中の流産は、単なる喪失にとどまらず、これまでの治療への努力、時間、金銭、希望のすべてが「無に帰した」と感じられるため、複雑性悲嘆(complicated grief)のリスクが高まります。また、周囲に話しにくい、支援を受けにくい状況も重なり、孤立感が深まることが少なくありません。
■ 自責感と羞恥心
流産後、多くの方が「自分のせいではないか」「体に問題があるせいだ」と自分を責める傾向があります。これは認知の歪みのひとつであり、心理的ストレスを悪化させる要因です。
2. 孤独な悲しみに対する心のケア
■ 感情を「否定しない」ことが第一歩
悲しみ、怒り、絶望、無力感…。どんな感情も自然な反応です。これらを抑え込まず、まずは「感じてもいい感情である」と受け入れることが回復への第一歩となります。
■ 安全な場での感情表出
信頼できる他者との会話、または心理士との対話は、感情を言語化し、整理する上で非常に効果的です。非判断的に話を聴いてもらえる場が、孤独を和らげ、癒しを促進します。
■ パートナーとの心理的距離の調整
パートナーも同じ喪失を経験しているとはいえ、感じ方や表現方法は異なります。互いの違いを受け入れながら、共に悲しむ時間と個々で癒す時間の両方を尊重することが大切です。
■ 身体感覚への気づき(マインドフルネスの活用)
ストレスは身体にも現れます。マインドフルネスや呼吸法、軽いヨガなどの身体的アプローチは、過剰な思考を静め、安心感を回復するのに役立ちます。
3. 専門家に相談するという選択
悲しみが長引く場合、自責感や無力感から抜け出せない場合、日常生活に支障が出ている場合には、臨床心理士や公認心理師などの専門家への相談をおすすめします。心理的支援には以下のようなアプローチが用いられます:
- ナラティヴ・アプローチ:体験を語り直し、意味づけを見直す
- 認知行動療法(CBT):否定的な思考パターンを見直す
- 悲嘆カウンセリング:喪失体験に特化した心理的介入
また、継続的な治療の意思決定にも心理的支援が有用です。どのタイミングで治療を再開するか、あるいは中止するかについて、冷静に整理するためにもカウンセリングは役立ちます。
4. 「癒し」は段階的に進む
心の回復は直線的ではなく、波のように「落ち込む日」と「少し楽な日」を繰り返しながら進んでいきます。「前向きにならなければ」と焦る必要はありません。「今の自分を大切にする」ことこそが、最も確実な癒しへの道です。
おわりに
不妊治療中の流産は、非常に複雑で繊細な心理的負荷をもたらします。しかし、その痛みや悲しみにも適切な支援があります。一人で抱え込まず、必要なときに支援を受けることは「弱さ」ではなく「自分を守るための力」です。あなたの心が、少しずつでも軽くなることを願っています。
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