不妊治療ハラスメントとは?職場で起こりやすい事例と企業の対策を心理士が解説
「また休むの?」
「子どもはまだ?」
「仕事と治療、どっちが大事なの?」
不妊治療を受けながら働く人の中には、職場での何気ない言葉や態度に深く傷ついている人が少なくありません。
不妊治療は、身体的・精神的・経済的負担が大きいにもかかわらず、周囲から見えにくいという特徴があります。そのため、理解不足や偏見によって、当事者が孤立しやすい現状があります。
近年では、こうした職場での嫌がらせや無理解を「不妊治療ハラスメント(妊活ハラスメント)」として問題視する声も増えてきました。
不妊治療と仕事の両立が難しく、離職を選ばざるを得ない人もいます。これは個人だけの問題ではなく、企業にとっても人材流出や職場環境悪化につながる重要な課題です。
この記事では、不妊治療ハラスメントの具体例や起こる背景、企業に求められる対策について、臨床心理士・公認心理師の視点からわかりやすく解説します。
Contents
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不妊治療ハラスメントとは?
不妊治療ハラスメントの定義
不妊治療ハラスメントとは、妊活や不妊治療をしている人に対して行われる、不適切な言動や嫌がらせのことを指します。
法律上の正式名称ではありませんが、近年は「妊活ハラスメント」という言葉も広まり、社会的な問題として注目されるようになっています。
例えば、
- 妊娠・出産を急かす発言
- 不妊治療への偏見
- 通院への嫌味
- キャリア上の不利益
- プライバシー侵害
などが含まれます。
悪意がない「何気ない一言」であっても、当事者にとっては大きなストレスや傷つきにつながることがあります。
なぜ今問題になっているのか
背景には、晩婚化や不妊治療を受ける人の増加があります。
現在、日本では多くの人が不妊治療を経験しており、体外受精などの高度生殖医療も一般的になってきました。保険適用の拡大によって、治療を受ける人は今後さらに増えると考えられています。
一方で、不妊治療と仕事の両立は非常に難しい現実があります。
- 通院回数が多い
- 急な受診が必要になる
- 採卵や移植で体調が不安定になる
- 治療結果による精神的ダメージが大きい
にもかかわらず、職場の理解や制度整備が追いついていない企業も少なくありません。
不妊治療中の人が抱えやすい心理的負担
不妊治療中は、常に強いプレッシャーや不安を抱えやすい状態になります。
例えば、
- 「早く結果を出さなければ」という焦り
- 周囲と比較してしまう苦しさ
- 自分を責める気持ち
- パートナーとの温度差
- 治療費への不安
- 仕事に迷惑をかけている罪悪感
などです。
さらに、治療がうまくいかなかった時には深い喪失感を抱えることもあります。
本来であれば支えが必要な時期に、職場で理解されなかったり傷つく言葉を受けたりすると、メンタルヘルス不調につながるリスクも高まります。
職場で起こりやすい不妊治療ハラスメントの事例
子どもや妊娠に関する不用意な発言
もっとも多いのが、妊娠や出産に関する何気ない発言です。
例えば、
- 「まだ子ども作らないの?」
- 「早く産んだ方がいいよ」
- 「不妊治療してるの?」
- 「二人目は?」
- 「子どもは絶対いた方がいいよ」
など。
言った側に悪気がなくても、当事者は深く傷つくことがあります。
不妊治療中は、周囲の何気ない会話に敏感になりやすい時期でもあります。
「普通の会話」と思われがちなテーマだからこそ、配慮が必要です。
通院への理解不足
不妊治療では、急な通院が必要になることがあります。
しかし職場では、
- 「また休むの?」
- 「そんなに病院行く必要ある?」
- 「仕事優先できないの?」
- 「みんな忙しいのに」
といった反応をされるケースもあります。
不妊治療はスケジュール調整が難しく、身体の状態に合わせた受診が必要です。
本人も「迷惑をかけたくない」と感じながら働いていることが多く、こうした言葉は大きな精神的負担になります。
昇進・評価への影響
不妊治療を理由に、キャリア面で不利益を受けるケースもあります。
例えば、
- 責任ある仕事を外される
- 昇進候補から外される
- 長期案件を任されなくなる
- 「どうせ辞めるでしょ」と扱われる
などです。
これは本人の意思確認なしに行われることもあり、深刻な問題です。
「配慮」のつもりであっても、本人のキャリア選択を奪ってしまう可能性があります。
プライバシー侵害
不妊治療は非常にプライベートな問題です。
にもかかわらず、
- 治療について勝手に周囲へ話される
- 上司が他部署へ共有する
- 噂話の対象になる
といったケースもあります。
本人の同意なく情報を共有することは、信頼関係を大きく損ないます。
男性不妊治療への偏見
不妊治療は女性だけの問題と思われがちですが、不妊の原因は男性側にもあります。
しかし現実には、
- 「男には関係ない」
- 「女性だけが頑張るもの」
- 「男性が休む必要ある?」
という偏見も少なくありません。
男性側も検査や通院、精神的負担を抱えていることへの理解が必要です。
不妊治療ハラスメントが起こる原因
不妊治療への知識不足
大きな原因のひとつは、不妊治療への理解不足です。
実際には、
- 頻繁な通院
- ホルモン治療
- 採卵の身体的負担
- 強い副作用
- 治療結果による心理的ダメージ
など、想像以上に負担が大きいものです。
しかし、経験したことがない人には見えにくいため、「そこまで大変なの?」と思われやすい現状があります。
「妊娠・出産は個人の問題」という認識
不妊治療は、長く「個人の問題」とされてきました。
そのため、
- 職場で話しづらい
- 支援制度が整わない
- 配慮が後回しになる
という状況が起こりやすくなります。
しかし、不妊治療による離職は企業にとっても大きな損失です。
個人だけに負担を押しつけるのではなく、社会全体で支える視点が求められています。
心理的安全性の低い職場環境
「相談したら評価が下がるかもしれない」
「迷惑だと思われそう」
そんな不安から、誰にも相談できず抱え込む人も少なくありません。
心理的安全性が低い職場では、ハラスメントが起きやすくなります。
不妊治療ハラスメントによる影響
メンタルヘルスへの影響
不妊治療中は、もともと心理的負担が大きい時期です。
そこに職場ストレスが重なることで、
- 抑うつ状態
- 不安
- 睡眠障害
- 自己肯定感低下
などにつながることがあります。
「職場に行くのが怖い」と感じる人もいます。
離職・キャリア断念
実際に、不妊治療との両立が難しく退職する人もいます。
これは本人だけでなく、企業にとっても大きな損失です。
経験ある人材の離職は、組織全体にも影響を与えます。
企業イメージ低下
ハラスメント対応が不十分な企業は、
- 採用力低下
- SNSでの悪評
- エンゲージメント低下
にもつながります。
近年では「働きやすさ」や「心理的安全性」を重視して企業選びをする人も増えています。
企業が行うべき不妊治療ハラスメント対策
まずは「知る」ことから始める
不妊治療への正しい理解を広げることが重要です。
- 管理職研修
- ハラスメント研修
- 妊活・不妊治療の基礎知識共有
などを行うことで、無理解による言動を減らせます。
相談しやすい環境づくり
「安心して相談できる環境」が非常に重要です。
例えば、
- 相談窓口の設置
- 外部カウンセラー活用
- 1on1面談
- 心理的安全性向上
などが有効です。
柔軟な働き方を整備する
不妊治療と仕事を両立するためには、柔軟性が必要です。
- 時差出勤
- リモートワーク
- 時間単位休暇
- 通院休暇
- 有給取得しやすい文化
などは大きな支えになります。
プライバシー保護を徹底する
本人の同意なく情報共有しないことは基本です。
不妊治療は極めてセンシティブな情報であり、慎重な取り扱いが必要です。
男性社員への理解促進
不妊治療を女性だけの問題にしないことも重要です。
男性社員が治療や通院について話しやすい環境づくりも求められます。
不妊治療と仕事を両立するために個人ができること
信頼できる相談先を持つ
不妊治療中は、一人で抱え込まないことが大切です。
- パートナー
- 医療者
- カウンセラー
- 信頼できる上司
など、安心して話せる相手を持つことは大きな支えになります。
自分を責めすぎない
不妊治療は努力だけでは結果をコントロールできません。
うまくいかない時に、自分を責め続ける必要はありません。
まずは「今とても頑張っている自分」を認めることも大切です。
不妊治療は「個人の問題」ではなく社会全体の課題
不妊治療は、本人だけが頑張れば解決する問題ではありません。
職場の理解、制度整備、心理的安全性、社会全体の価値観など、多くの要素が関わっています。
安心して働きながら治療できる環境は、結果的に、
- 離職防止
- 人材定着
- エンゲージメント向上
- 健康経営
にもつながります。
不妊治療をしている人だけを特別扱いするのではなく、「誰もが安心して働ける職場」を目指すことが大切なのかもしれません。
関連記事:不妊治療と仕事の両立支援とは?企業ができる配慮と支援策を解説
まとめ|不妊治療ハラスメントを防ぐために大切なこと
不妊治療ハラスメントは、当事者の心やキャリアに大きな影響を与える深刻な問題です。
何気ない一言や無理解が、相手を深く傷つけてしまうことがあります。
だからこそ、
- 正しい知識を持つこと
- 想像力を持つこと
- 相談しやすい環境を作ること
- 柔軟な働き方を整えること
が重要です。
不妊治療と仕事の両立に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、安心できる相手に相談してみてください。
また企業側にも、「働きやすい職場づくり」の一環として、不妊治療への理解と支援が求められています。
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- メンタルヘルス研修
- セルフケア研修
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臨床心理士・公認心理師が、心理学の視点から「現場で活かせる内容」をわかりやすくお伝えします。

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