不妊治療と仕事の両立支援とは?企業ができる配慮と支援策を解説

不妊治療を受けながら働く人は、年々増えています。

一方で、「仕事を続けながら治療を続けることが難しい」と感じる人も少なくありません。通院のためのスケジュール調整、体調不良、周囲に相談しづらい空気など、さまざまな負担を抱えながら働いている人が多いのが現状です。

実際に、不妊治療と仕事の両立ができず、離職やキャリア変更を選ばざるを得なかったという声もあります。

こうした背景から、近年は企業による「不妊治療と仕事の両立支援」の重要性が注目されています。

この記事では、不妊治療と仕事の両立が難しい理由や、企業ができる具体的な配慮・支援策について、臨床心理の視点も交えながら解説します。

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不妊治療と仕事の両立が難しい理由

通院回数が多くスケジュール調整が難しい

不妊治療では、定期的な通院が必要になります。

特に体外受精や顕微授精などの高度生殖医療では、採卵や移植に向けて短期間に複数回通院することも少なくありません。

また、治療は月経周期やホルモン値に合わせて進むため、「次回の受診日が直前まで決まらない」「急に明日来てくださいと言われる」といったケースもあります。

そのため、

  • 会議やシフトとの調整が難しい
  • 急な休みが取りづらい
  • 周囲に理由を説明しづらい

など、働きながら治療を続ける負担は大きくなりやすいのです。


身体的・精神的負担が大きい

不妊治療は、身体面だけでなく心理面にも大きな負担を伴います。

ホルモン治療による副作用として、

  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 気分の落ち込み
  • イライラ

などが生じることがあります。

さらに、

「結果が出なかったらどうしよう」
「いつまで続ければいいのだろう」
「周囲は妊娠していくのに…」

といった不安や焦りを抱えながら仕事を続けることは、想像以上にエネルギーを必要とします。

特に治療結果がうまくいかなかった時には、深い喪失感を抱えながら通常通り働かなければならない苦しさを感じる人も少なくありません。


周囲に相談しづらい

不妊治療は非常にプライベートな問題です。

そのため、

  • 「職場に知られたくない」
  • 「説明しても理解されない気がする」
  • 「迷惑だと思われそう」

と感じ、誰にも相談できずに抱え込んでしまう人もいます。

また、何気ない言葉が大きな傷になることもあります。

例えば、

  • 「子どもはまだ?」
  • 「仕事ばかりしてるからじゃない?」
  • 「そんなに考えすぎないほうがいいよ」

などの言葉に苦しむ当事者は少なくありません。

悪気のない発言でも、当事者にとっては強いストレスになる場合があります。


離職やキャリア断念につながることもある

不妊治療と仕事の両立が難しくなると、

  • 正社員を辞める
  • 時短勤務に変更する
  • キャリアアップを諦める
  • 治療を優先して退職する

といった選択につながることがあります。

「仕事か治療か」を迫られる状況は、当事者にとって非常につらいものです。

企業側にとっても、経験やスキルを持つ人材の離職は大きな損失になります。


なぜ今、企業の「不妊治療両立支援」が求められているのか

不妊治療を受ける人は増えている

近年は、晩婚化・晩産化の影響もあり、不妊治療を受ける人が増えています。

実際、日本産科婦人科学会のデータによると、2022年に実施された体外受精などの生殖補助医療(ART)の治療件数は約49万件を超えており、年々高い水準で推移しています。

また、2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大されたことで、以前よりも治療を選択しやすくなりました。

さらに、こども家庭庁の調査では、「夫婦4.4組に1組が不妊の検査や治療を経験している」とされており、不妊治療は決して一部の人だけの問題ではありません。

現在では、多くの働く世代が不妊治療と仕事の両立という課題に向き合っています。

こども家庭庁


両立困難による離職リスクがある

不妊治療と仕事の両立支援が不十分な場合、離職リスクが高まることがあります。

特に、

  • 急な休みに理解がない
  • 治療への配慮がない
  • 相談しづらい職場環境

などが続くと、心身の負担が限界に達し、「辞めるしかない」と感じてしまうこともあります。

人材不足が課題となる中、従業員が安心して働き続けられる環境づくりは、企業にとっても重要な課題です。


心理的安全性や企業イメージにも関係する

不妊治療支援は、単なる福利厚生ではありません。

「困った時に相談できる」
「個人の事情を尊重してもらえる」

という安心感は、職場全体の心理的安全性にもつながります。

また、近年は採用活動においても、

  • 働きやすさ
  • 多様性への配慮
  • ウェルビーイング

を重視する人が増えています。

不妊治療支援に取り組むことは、企業イメージや人材定着にも良い影響を与える可能性があります。


不妊治療と仕事の両立のために企業ができる配慮

通院しやすい勤務制度を整える

不妊治療では、急な通院が必要になることがあります。

そのため、

  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤
  • テレワーク
  • 中抜け勤務
  • 時間単位休暇

など、柔軟な働き方ができる制度は大きな支えになります。

特別な制度を新設しなくても、既存制度を柔軟に運用するだけで負担軽減につながる場合もあります。


不妊治療休暇・休職制度を導入する

近年は、不妊治療を目的とした特別休暇制度を導入する企業も増えています。

例えば、

  • 通院日のための特別休暇
  • 採卵・移植時の休暇
  • 治療期間中の短期休職

などです。

制度があることで、「休みを申し出にくい」という心理的負担の軽減にもつながります。


上司・管理職の理解を深める

制度だけでは、十分な支援にはなりません。

実際には、上司や管理職の理解が、当事者の安心感に大きく影響します。

例えば、

  • 治療内容を詮索しない
  • 配慮が必要か確認する
  • 本人の希望を尊重する
  • 「頑張って」だけで終わらせない

といった関わりが重要です。

不妊治療について正しい知識を持つ研修を行うことも有効でしょう。


プライバシーに配慮する

不妊治療は非常にセンシティブなテーマです。

そのため、

  • 必要以上に情報共有しない
  • 限られた担当者のみ把握する
  • 診断書提出を最小限にする
  • 本人の同意なく周囲に伝えない

など、プライバシーへの配慮が欠かせません。

「安心して相談できる」と感じられる環境づくりが重要です。


心理的サポート体制を整える

不妊治療では、強いストレスや孤独感を抱えることがあります。

そのため、

  • カウンセリングサービス
  • EAP(従業員支援プログラム)
  • 社外相談窓口
  • メンタルヘルス支援

などを活用できる環境は、大きな支えになります。

「一人で抱え込まなくていい」と感じられることは、心理的負担の軽減につながります。

関連記事:不妊治療ハラスメントとは?職場で起こりやすい事例と企業の対策を心理職が解説


実際に進んでいる企業の取り組み例

近年は、不妊治療支援に取り組む企業も増えています。

例えば、

  • 不妊治療休暇制度の導入
  • 治療費補助
  • 通院時間の柔軟化
  • 管理職向け研修
  • 外部カウンセリングの導入

など、企業ごとにさまざまな工夫が行われています。

特に、「制度を作るだけ」で終わらず、実際に利用しやすい環境づくりまで取り組んでいる企業では、従業員満足度や定着率向上につながっているケースもあります。


支援制度を導入する際のポイント

「制度を作るだけ」で終わらせない

制度があっても、

  • 利用しづらい
  • 周囲の理解がない
  • 評価に影響しそう

と感じる環境では、実際には活用されにくくなります。

大切なのは、「使っても大丈夫」と感じられる職場文化です。


利用しやすい雰囲気づくりが重要

例えば、

  • 管理職が理解を示す
  • 配慮を自然に行う
  • 詮索しない文化を作る

など、日常的な関わりが安心感につながります。


当事者の声を反映する

支援制度を考える際には、実際の当事者の声を取り入れることも大切です。

企業側が「これで十分だろう」と思っていても、実際には使いにくい場合もあります。

現場のニーズを把握しながら制度設計を行うことが重要です。


男性不妊・パートナー支援も視野に入れる

不妊治療は女性だけの問題ではありません。

男性不妊の検査や治療、パートナーの通院同行など、男性側の支援が必要になるケースもあります。

「女性だけの制度」にしない視点も大切です。


不妊治療中の人が職場でできる工夫

信頼できる相手に必要な範囲で共有する

すべてを話す必要はありません。

ただ、必要に応じて信頼できる上司や担当者に共有することで、働きやすくなる場合もあります。


無理を抱え込みすぎない

「迷惑をかけたくない」
「頑張らなければ」

と無理を重ねてしまう人も少なくありません。

しかし、不妊治療は長期戦になることもあります。

一人で抱え込み続けると、心身ともに疲弊してしまうことがあります。


心理的サポートを活用する

不妊治療中は、孤独感や不安が強くなりやすい時期でもあります。

カウンセリングや相談窓口など、安心して気持ちを話せる場を持つことは、大きな支えになることがあります。


まとめ

不妊治療と仕事の両立は、多くの人にとって大きな課題です。

通院の負担や体調変化、心理的ストレスを抱えながら働くことは、決して簡単ではありません。

だからこそ、企業による理解や支援体制が重要になります。

  • 柔軟な働き方
  • 相談しやすい環境
  • プライバシーへの配慮
  • 心理的サポート

こうした積み重ねが、当事者の安心感や働き続けやすさにつながります。

不妊治療をしている人が孤立せず、「仕事も治療も大切にしていい」と感じられる社会に近づいていくことが求められています。

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