男性不妊の治療法を原因別に解説|手術・薬物療法・顕微授精・TESE

男性不妊とわかったとき、「治療すれば改善するのか」「自然妊娠は難しいのか」「すぐに顕微授精が必要なのか」と不安になる方は少なくありません。

男性不妊の治療は一つではありません。精索静脈瘤、ホルモン異常、精子の通り道の閉塞、勃起・射精の問題など、原因そのものに働きかける治療があります。一方、人工授精や体外受精、顕微授精などによって、妊娠までの過程を補う方法もあります。

大切なのは、「男性不妊なら全員が同じ治療を受ける」のではなく、男性側の検査結果だけでなく、パートナーの年齢や卵巣機能、妊活期間、これまでの治療歴も含めて方針を考えることです。

この記事では、日本泌尿器科学会の「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」や日本生殖医学会の「生殖医療Q&A 2025」などをもとに、男性不妊の治療法と選び方をわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 男性不妊の治療は「原因を治療する方法」と「妊娠を補助する方法」に分けられる
  • 精索静脈瘤、ホルモン異常、精路閉塞などは、原因に応じた治療が検討される
  • 精液所見の程度によって、人工授精・体外受精・顕微授精などが選択される
  • 無精子症でも、精巣や精巣上体から精子を採取できる可能性がある
  • 治療方針は、男性側と女性側の状況を合わせて決めることが大切
男性不妊
男性不妊

男性不妊は治る?まず知っておきたい治療の考え方

男性不妊が「治るかどうか」は、原因によって異なります。治療によって精液所見の改善を期待できる場合もあれば、精子をつくる機能そのものを十分に回復させることが難しく、生殖補助医療を利用する場合もあります。

男性不妊の治療は、大きく次の3つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。

  1. 原因に働きかける治療
    精索静脈瘤の手術、ホルモン療法、精子の通り道をつなぐ手術、勃起・射精障害への治療など
  2. 妊娠を補助する治療
    タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精など
  3. 精子を回収して顕微授精につなげる治療
    精巣内精子採取術(TESE)や顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)など

原因治療と生殖補助医療は、必ずしもどちらか一方を選ぶものではありません。原因治療を行いながら精液所見の変化を確認する場合もあれば、時間的な要因を考えて、体外受精や顕微授精を並行して検討する場合もあります。

なお、精液検査の基準値や男性不妊の原因については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:男性不妊の原因・検査・割合を解説|不妊の約半数に男性側の要因

男性不妊の治療法を原因別に解説

治療を選ぶときは、精子の数や運動率だけを見るのではなく、「なぜ精液所見が低下しているのか」を確認することが重要です。ここからは、代表的な原因ごとの治療法を見ていきましょう。

1.生活習慣の見直しと服薬内容の確認

喫煙、肥満、過度な飲酒、睡眠不足、高温環境などは、精子の状態に影響する可能性があります。そのため、禁煙、適正体重の維持、睡眠や食生活の見直しなどが勧められることがあります。

ただし、生活習慣を整えれば、すべての男性不妊が改善するわけではありません。無精子症、精索静脈瘤、精路閉塞、遺伝的要因などがある場合には、医療的な治療が必要になることがあります。「まず3か月生活を改善してから受診しよう」と自己判断で待つのではなく、検査と生活改善を並行して進めるほうがよい場合もあります。

また、男性ホルモンであるテストステロン製剤や筋肉増強目的のアナボリックステロイドは、体外から補充すると精巣内での精子形成を抑えることがあります。妊娠を希望している場合は、現在使用している薬やサプリメントを医師に伝えてください。処方薬は自己判断で中止せず、処方医と男性不妊を専門とする医師に相談しましょう。

抗酸化サプリメントやビタミン剤が利用されることもありますが、妊娠や出生につながる効果が十分に確立していないものもあります。「男性不妊に効く」とされる商品だけに頼らず、原因を調べたうえで必要性を確認することが大切です。

関連記事:男性不妊は改善する?精子の質に影響する生活習慣と改善のポイント

2.ホルモン異常に対する薬物療法

精子形成に必要なホルモンの分泌が不足する「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」などでは、hCG製剤やFSH製剤などを用いたホルモン療法によって、精子形成を促す治療が検討されます。

ホルモン療法の適応は、血液検査のFSH、LH、テストステロンなどを確認して判断されます。精液所見が悪い人すべてにホルモン剤が有効というわけではなく、原因に合った治療であることが重要です。また、効果が現れるまでに時間がかかる場合があり、定期的な採血や精液検査による評価が必要です。

3.精索静脈瘤に対する手術

精索静脈瘤とは、精巣の周囲にある静脈が拡張し、血液が逆流する状態です。精巣周辺の温度上昇や酸化ストレスなどを通して、精子形成に影響する可能性があります。

日本泌尿器科学会の「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」では、触って確認できる精索静脈瘤があり、精液所見が不良な場合に、外科的治療が適応になるとされています。一般的には、手術用顕微鏡を使って逆流する静脈を処理する「顕微鏡下精索静脈瘤手術」が行われます。

手術によって精液所見や妊娠率の改善が期待されますが、すべての人に同じ効果が得られるわけではありません。また、精子形成には時間がかかるため、術後の変化を確認するまでに数か月を要することがあります。

手術を待つか、生殖補助医療を先に進めるかは、静脈瘤の程度だけでなく、パートナーの年齢や卵巣機能、妊活期間なども含めて検討します。

4.精子の通り道がふさがっている場合の治療

精巣で精子がつくられていても、精管などがふさがっているために精液中へ精子が出てこない状態を「閉塞性無精子症」といいます。先天的な精管の異常、感染症、過去の手術、精管結紮術などが原因になることがあります。

状況に応じて、次のような方法が検討されます。

  • 精路再建術:ふさがっている精子の通り道を顕微鏡下でつなぐ
  • 精子採取術:精巣上体や精巣から精子を回収し、顕微授精に用いる

どちらを選ぶかは、閉塞している場所、再建の見込み、女性側の年齢や妊孕性、希望する子どもの人数、治療にかかる時間などによって異なります。精路再建は自然妊娠の可能性を目指せる一方、妊娠までに時間がかかることがあります。精子採取術では、採取した精子を使った顕微授精が必要になります。

5.勃起障害・射精障害に対する治療

勃起障害(ED)、腟内射精障害、逆行性射精などがある場合も、妊娠に至りにくくなることがあります。背景には、糖尿病などの疾患、服薬の影響、手術後の神経障害、心理的な緊張、妊活のための性交に対するプレッシャーなど、さまざまな要因があります。

原因に応じて、ED治療薬、服薬内容の調整、射精障害への薬物療法などが検討されます。性交や射精が難しい場合でも、採取した精子を用いて人工授精や顕微授精を行える場合があります。逆行性射精では、射精後の尿から精子を回収する方法が検討されることもあります。

性機能の問題は、「気持ちの問題」「努力不足」として片づけられるものではありません。妊活によるプレッシャーが症状を強めることもあるため、泌尿器科的な治療と心理的なサポートの両方が役立つ場合があります。

精液所見に応じた不妊治療|人工授精・体外受精・顕微授精

原因治療を行っても妊娠に至らない場合や、妊娠までの時間を優先する必要がある場合には、精液所見や女性側の状態に応じて不妊治療の方法を選びます。

治療法方法男性不妊で検討される主な場面
タイミング法排卵時期に合わせて性交のタイミングを調整する精液所見の低下が軽度で、女性側にも大きな問題がない場合など
人工授精(IUI)洗浄・濃縮した精子を排卵時期に子宮内へ注入する軽度から中等度の精液所見低下、性交・射精が難しい場合など
体外受精(IVF)採取した卵子と精子を体外で一緒にして受精を促す人工授精で妊娠に至らない場合、女性側の要因もある場合など
顕微授精(ICSI)1個の精子を細い針で卵子の中へ注入する精子数・運動率が著しく低い場合、通常の体外受精で受精が難しい場合、TESEで採取した精子を用いる場合など

人工授精が可能か、体外受精や顕微授精が必要かを分ける一律の数値はありません。処理後の運動精子数、精子の状態、女性側の卵管や卵巣機能、年齢、これまでの治療結果などを総合して判断します。

顕微授精は「最も強い治療」ではない

顕微授精は、精子の数が非常に少ない場合や運動率が低い場合でも、受精の機会をつくれる重要な治療です。ただし、顕微授精を行えば必ず受精・妊娠・出産に至るわけではありません。

また、顕微授精は精子をつくる機能自体を治す治療ではなく、卵子と精子が受精する過程を補助する方法です。採卵が必要になるため、女性側には排卵誘発、通院、採卵などの身体的負担も生じます。

日本生殖医学会の「生殖医療Q&A 2025」では、顕微授精は、原則としてこの方法でなければ受精が難しい場合に行うと説明されています。「早く結果を出したいから」「体外受精より成功率が高そうだから」という理由だけではなく、適応と負担の両方を確認して決めることが大切です。

無精子症の治療|TESE・micro-TESEとは

無精子症とは、精液中に精子が認められない状態です。ただし、「精液中に精子がいない」ことと「体内で精子がまったくつくられていない」ことは同じではありません。まずは再検査を行い、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症を区別することが重要です。

閉塞性無精子症の場合

閉塞性無精子症では、精巣内で精子がつくられていても、通り道がふさがっているため精液中へ出てきません。精路再建術のほか、精巣上体または精巣から精子を採取する方法が検討されます。

非閉塞性無精子症の場合

非閉塞性無精子症では、精巣内の精子形成が著しく低下しています。この場合、手術用顕微鏡で精巣内を観察し、精子がつくられている可能性のある部分を探す顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE/MD-TESE)が検討されます。

回収できた精子は数が限られるため、基本的に顕微授精に用いられます。ただし、手術を行っても精子を回収できない場合があります。痛み、腫れ、血腫、感染、精巣機能への影響などのリスクもあるため、期待できることと限界の両方について説明を受けることが大切です。

無精子症や高度の乏精子症では、染色体検査やY染色体微小欠失検査などが行われることがあります。検査結果によっては、精子採取術の適応や、子どもへの遺伝に関する説明、遺伝カウンセリングが必要になる場合があります。

男性不妊の治療はどのように選ぶ?

治療法は、精液検査の結果だけで決めるものではありません。主に次の要素を総合して検討します。

  • 男性不妊の原因と重症度
  • 精液所見の再検査結果
  • 男性・女性双方の年齢
  • 女性側の卵巣予備能、卵管の状態、排卵の状況
  • 妊活・不妊治療を続けている期間
  • これまでの人工授精や体外受精の結果
  • 希望する治療、身体的・心理的・経済的な負担

たとえば、精索静脈瘤の手術後に数か月かけて精液所見の変化をみることが医学的には可能でも、女性側の年齢や卵巣機能によっては、同時に生殖補助医療を検討したほうがよい場合があります。

反対に、精液所見が悪いという理由だけで、原因検索をせず直ちに顕微授精へ進むと、治療できる男性側の疾患を見逃す可能性があります。産婦人科・生殖医療科と、男性不妊を扱う泌尿器科が連携している医療機関に相談すると、選択肢を整理しやすくなります。

治療方針を聞くときに確認したいこと

  • 今回の検査結果から考えられる原因は何か
  • 原因そのものを治療できる可能性はあるか
  • その治療で期待できることと、主なリスクは何か
  • 効果を判断するまで、どれくらいの期間をみるのか
  • 人工授精・体外受精・顕微授精へ進む目安は何か
  • 女性側の年齢や検査結果を含めると、どの順番が現実的か

男性不妊治療の期間と保険適用

治療期間は原因によって大きく異なります。ED治療薬などで比較的早く対応できる場合もあれば、ホルモン療法や精索静脈瘤手術後のように、精子形成の変化を確認するまで数か月以上かかる場合もあります。TESEを行う場合は、女性側の採卵時期や精子の凍結方法も含めた調整が必要です。

日本では、人工授精、体外受精、顕微授精、精巣内精子採取術など、一定の不妊治療が保険適用の対象となっています。ただし、治療内容、年齢、治療回数、医療機関の施設基準などによって条件が異なり、検査や追加治療の一部が自費になることもあります。

費用は治療法だけでなく、薬剤、検査、麻酔、精子や胚の凍結保存などによっても変わります。治療を始める前に、保険診療の範囲、自己負担額、追加費用について医療機関へ確認してください。

男性不妊の治療で起こりやすい心の負担

男性不妊と診断されると、「自分のせいで妊娠できない」「パートナーに申し訳ない」「男性として否定されたように感じる」といった思いを抱くことがあります。結果を受け止めきれず、治療の話を避けたり、何も感じていないように振る舞ったりすることもあります。

しかし、医学的な原因が見つかることと、誰かに責任があることは別です。不妊治療は、原因を責めるためではなく、二人に合う選択肢を見つけるために行うものです。

また、男性側の要因に対する治療として顕微授精を選ぶ場合でも、女性側には排卵誘発や採卵、胚移植などの負担が生じます。男性は申し訳なさから黙り、女性は「私ばかりが治療している」と感じるなど、負担の見え方の違いからすれ違いが起こることもあります。

話し合うときは、「どちらが原因か」ではなく、次のような問いを共有してみてください。

  • それぞれが今、何を不安に感じているか
  • どこまでの治療なら受けたいと思えるか
  • 身体的・心理的・経済的な負担をどう分担するか
  • いつ、どの段階で治療方針を見直すか

関連記事:妊活・不妊治療ストレスが夫婦関係に与える影響とは?すれ違いを防ぐ対話法

男性不妊の治療に関するよくある質問

男性不妊は薬だけで治せますか?

ホルモンの分泌異常など、原因によっては薬物療法が有効です。一方、精索静脈瘤や精路閉塞では手術が検討されることがあり、原因不明の造精機能障害では薬だけで十分な改善が得られない場合もあります。検査結果に合った治療を選ぶことが必要です。

精子が少ないと、すぐに顕微授精になりますか?

必ずしもそうではありません。精子の数だけでなく、運動率、処理後の運動精子数、女性側の状態、妊活期間などによって、タイミング法や人工授精を検討できる場合もあります。一方、精液所見が著しく低い場合や受精障害がある場合には、顕微授精が勧められることがあります。

無精子症でも子どもを持てる可能性はありますか?

閉塞性無精子症では精子を採取できる可能性があり、非閉塞性無精子症でもmicro-TESEによって精子が見つかる場合があります。ただし、採取できるかどうかは原因や精巣の状態によって異なり、手術をしても精子が見つからないことがあります。検査結果をもとに専門医から説明を受けることが大切です。

生活習慣を改善すれば自然妊娠できますか?

生活習慣の見直しは精子の健康を支えるうえで大切ですが、自然妊娠を保証するものではありません。治療可能な原因が隠れていることもあるため、生活改善だけで長期間様子をみず、必要な検査を並行して受けましょう。

男性不妊は何科を受診すればよいですか?

男性不妊を扱う泌尿器科、または男性不妊外来が受診先になります。カップルで不妊治療を進めている場合は、生殖医療を行う産婦人科と連携できる医療機関が望ましいでしょう。

まとめ|男性不妊の治療は原因と二人の状況に合わせて選ぶ

男性不妊には、生活習慣の見直し、薬物療法、精索静脈瘤手術、精路再建術、勃起・射精障害への治療など、原因に応じた選択肢があります。また、人工授精、体外受精、顕微授精、TESEなどによって妊娠を目指す方法もあります。

「男性不妊だから顕微授精」「無精子症だから方法がない」と一括りにすることはできません。まず原因と重症度を確認し、男性側と女性側の状態、治療にかけられる時間、二人の希望や負担を合わせて考えることが大切です。

わからないことがあるときは、「何が最善ですか」と尋ねるだけでなく、「それぞれの選択肢で期待できること、負担、必要な期間は何ですか」と医師に確認すると、納得できる治療方針を考えやすくなります。

不妊治療の気持ちを整理したい方へ

男性不妊によるショックや申し訳なさ、治療への迷い、パートナーとの温度差を、二人だけで抱え続ける必要はありません。

大阪堺臨床心理カウンセリングオフィスでは、不妊治療の知識と経験を持つ臨床心理士・公認心理師が、個人・カップルのご相談をお受けしています。初めての方には、オンライン30分の無料相談をご用意しています。

カウンセリングのご案内・料金を見る

予約・お問い合わせはこちら


参考文献・参考サイト

※本記事は、男性不妊の治療に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。治療の適応、効果、リスク、保険適用の可否は、検査結果や医療機関によって異なります。必ず担当医または男性不妊を専門とする医師にご相談ください。


▶ カウンセリングの詳細はこちら|心理カウンセリングのご案内

不妊治療、人間関係、日々の疲れ…
ひとりで抱える前に、少しだけ立ち止まって、心を整える時間を持ちませんか?
臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングを、あなたのペースでご利用いただけます。

ご予約方法

🔸 予約フォーム(24時間受付)

今すぐ予約

🔸 LINEでのご相談・ご予約も可能です
LINE公式アカウントから「予約希望」とメッセージをお送りください。

👉 LINEで予約・お問い合わせはこちら(外部リンク)

📌 ご予約に関するご案内

  • 完全予約制です
  • ご希望日時が埋まっている場合、調整のご連絡を差し上げます
  • キャンセルや変更は前日までにお願いします
  • 初回カウンセリングは30分(オンライン無料)です。継続や延長もご相談いただけます

よくあるご質問

Q. 初めてでも大丈夫ですか?
A. はい。初回は不安や疑問を丁寧にお伺いしながら進めます。お気軽にご相談ください。

Q. 対面とオンライン、どちらを選べますか?
A. ご希望に応じてお選びいただけます。オンラインはZoomまたはGoogleMeetで対応しています。

🌿 あなたの心が少し軽くなるお手伝いを

「話してよかった」そう思える時間を一緒に作りましょう。

▶ 今すぐ予約する

男性不妊の治療法を原因別に解説|手術・薬物療法・顕微授精・TESE” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です